布はある程度の伸縮性がありますが、 それでも曲線で構成され立体を覆うには、 できるだけ布の枚数が多いと有利です。 紙から地球儀を作る場合でも、 細かく切り開くほど、丸い地球儀が作れます。 それと同じです。 こちらはシャルル・ウォルトという、 「オートクチュールの父」と呼ばれる、 19世紀のデザイナーのドレスです。 デザインや生地、色の好みはさておきまして、 ほとんど美術品のような、 素晴らしい仕上がりのドレスです。 体に密着する上半身が、 実に美しく作られています。 上半身の布をよく観察すると、 片面(つまりたとえば右半身)後ろが、 3枚の布で構成されています。 後ろが3枚ですと、通常前も3枚になりますから、 この作品は6枚パターンということになります。 この6枚パターンの裁縫、 女性の体を理想的な曲線で表現できますが、 縫う手間がどうしても多いため、 ヨーロッパやアメリカの最高級ドレスでも、 最近ではほぼ絶滅状態にあります。 (今日皆様がレンタルショップで見かけるドレスは、 ほとんど簡略な4枚パターンのはずです) ひなぎくでは今でも原則6枚パターンで仕立てています。 物凄く少数派になってしまいました。 手間はかかりますが、 それでも女性らしい曲線を実現出来ているのは、 優秀な縫い子さんと、IT技術のおかげです。