3:未開紅(みかいこう)

・・未開紅(みかいこう)・・

3:未開紅(みかいこう)

立春の前約十五日、まだ冬のさなかでのAyanoさんのお式。

春らしい色合いの花々の中で、紫色のリューココリーネが主役です。

死の世界に向かってゆくような、

この海底の絵が中でも一番お好きとのこと。

果敢に水底に向かってゆく人魚姫は、

Ayanoさんその人であるように思えました。

その先に何があるか分からなくてももしかして何も無いかもしれなくとも、

蕾の殻を破って咲かんとしたり暗闇の中で生を予感しようとしてみたり、

花の蕾や水の中の世界というのは、

結婚前の女性の心境や立場にも通じているようです。

絵の人魚が手に持つ白い卵を、

胸元の刺繍素材でつくった額にかかるヘッドドレスの中央に、

刺繍ラインとスパンコールはオクトパスの手足と吸盤のようにも、

水泡のようにも見えてきます。

ドレス切り替えの中央に咲く、

水面の花に向かってのぼるように施した

スカートの白と金レース刺繍は、

水上から差す陽を目指すように仕上げました。

ずっと以前に見せていただいた、

Ayanoさんのお着物のお写真の柄の

紅白の鶴が空に飛ぶ様に見習って、

海中に咲き上がる花のつるを表しました。

「未開紅(みかいこう)」という和菓子が一番お好きといわれた

Ayanoさんのご実家は、

和菓子店を営まれています。

彼女のご出自をドレスの名前にさせていただきました。

四国徳島の海と空を思いながらコーディネートや装飾を重ねて、

次回は「羽開地(うかいち)」、

陽の光で羽根が花びらに変わる時のことです。

 

 

 

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