短期攻略ファッション史・5・洋服のパターンの重要性

ヴィオネが三番目になりましたが、
この話題で触れる4人の中では、一番古い人物です。
生没年を記入しますと、

ヴィオネ:1876~1975
ポワレ:1879~1944
シャネル:1883~1971
バレンシアガ:1895~1972

となります。一番早く生まれて、一番遅く亡くなっています。享年99!。
一般に、ポールポワレが女性をコルセットから開放したと言われていますが、
ヴィオネによれば、彼女が開放したのが早いらしくて、そこらへんの事情は混沌としているのですが、だいたいそんなふうなライバル関係です。

それでこの人は、パタンナーとしては、今日でも過去最高と言われる存在です。

洋服が他の服と大きく異なる点は、
パターン(型紙)作りの重要性が高いということです。
和服なんかは、だいたい決まりきった大きさで作りますね。
丈が長すぎたら、着るときに折り込んでしまう。だからパターン(型紙)の重要性が低い、
そのかわり生地を作るのが大変で、良い生地でないと着物にならない。
縫いも非常に繊細で、場所によっての縫い方の変化は繊細を極めますが、
それでもパターン的な苦労は(やったことありませんが)おそらくほとんど無い。

料理で考えるとわかりやすくて、日本料理は鮮度の高い素材を、
簡単な調理方法、例えば刺身ならば切るだけ、
もっとも名人になると高度な包丁捌きをするそうですが、
それでも悪い魚だと、名人でもどうしようも無いわけでして、
素材重視というか、素材に依存しきった料理体系です。

西洋の料理はぐつぐつ煮込んで、ソースを作って、
よく言えば知的で立体的ですが、悪く言えばあまり食材は良くなさそうだなあと、そんな感じがあります。

同じように、洋服はその知的で立体的な部分が、
大変重視されるのですが、
それはほとんど呪いに近いくらいでして、
1)着る人の体に、サイズがぴったり合っていなくてはならない。
2)人間の体の曲線を、演出しなければならない。
という二つの条件を、なにがなんでも満たさなければならないのです。
まずはこの写真ご覧下さい。

この絵に描かれているおじさんはルイ14世というひとなのですが、
実は、自分の脚線美に自信を持っており、
それを強調するために、わざわざタイツを穿き、わざわざ服の裾を跳ね上げているのです。
嫌な自信ですね。
足のポジションが、なんとなくレースクイーンのそれに似ているのも腹立たしいです。

しかしともかくもこれが、洋服の原理と言うべきものです。
こちらの写真と比べてください。

どちらが美しいかは別として、どちらがセクシーかと聞かれれば、
(むかつきますけど)前者と答えざるをえないでしょう。

大人しく穀物を食んで過ごしていた我々と違って、むこうは肉食民族ですから、
むきむきの肉体をどこまでも誇示して行く、そういう路線なのです。

しかしここで疑問に感じるのは、「だったらぴったりした服を作るよりも、
もっと積極的に肌を露出したほうがセクシーではないのか?」
ということなのですが、それについての話がまたもや少々面倒なので次回にします

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