コラム「葛飾応為」

レンブラントの絵画の修復が話題になっています。
(レンブラント・ファン・レイン 「夜警」)
レンブラントの絵はコントラストが強く、暗闇から浮かび上がるような雰囲気が特徴です。
(レオナルド・ダ・ビンチ 「洗礼者ヨハネ」)
レンブラントに限らず、レオナルド、カラバッジョもそうですから、
これは西洋特有の文化ですね。今での西洋の映画はこういう照明の当て方が好きです。
ということをいち早く気づいた日本画家が居ました。
西洋絵画の良いところはコントラストだ、
早速日本に取り入れよう。
気づいたひとは葛飾応為、葛飾北斎の娘、つまり女流画家です。
日本女性は普通に江戸時代から美術活動していたのですね。
(葛飾応為 「吉原格子先之図(こうしさきのず)」)
北斎は天才ですし、西洋絵画の研究も熱心ですが、
コントラストの表現に関しては、はっきり娘の応為が数段上です。
(葛飾応為 「春夜美人図」)
西洋文化の受容は明治以降と考えられがちですが、
科学技術同様、美術でも昔からよく研究されていたのですね。
それを女性がやったというのは、凄いことです。
もちろん西洋も西洋で日本絵画を勉強していました。
たとえばゴッホのこの絵は
(ゴッホ 「梅の開花」
広重の模写ですね
(安藤広重 「亀戸梅屋舗(うめやしき)」)
昨日デザイナーが、伊藤若冲の梅の花と
ゴッホの花咲くアーモンドの絵も、似ていると言っていました。
若冲は浮世絵、つまり版画ではなく普通の絵なので、
たくさんプリントするわけではありません。
現物がフランスに輸入されたとは考えにくいですが、
模写が渡ってゴッホが見たのかもしれません。
文化というのはこうやって世界を行ったりきたりするもので、
葛飾応為やゴッホは、それをいち早く研究できる感受性を持っていたようです。