トスカーナの贋作

先日お送りいただいた、シチリアでの前撮りのお写真を  
http://siesta-dress.com/2019/05/15/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%A8%E3%83%B3/
拝見して、思い出した映画がありました、「トスカーナの贋作」。イラン人の映画監督、キアロスタミの作品です。

映画の中で主人公の2人が、若いカップルの2人が結婚式をしている、生命樹の映えた地を旅の中で通り過ぎる、つまり聖地巡礼の、時間と空間の旅が描かれた映画です。

このお正月に彼女が、ご新郎様のご地元に帰られて、伊勢神宮にお参りした時の
お着物姿のお二人のお写真を、見せて下さったことを思い出しました。彼のお母様がくださった着物なんですと、嬉しそうに教えて下さいました。

シチリア

お客様からお写真を頂戴しました。撮影はシチリア島。行ったことがないが、大変美しい風景です。

カメラマンが現地人なのかどうかお聞きしていませんが、とにかく撮影のツボを心得ている。

警官が見えれば警官を入れる。

ネコが見えればネコを入れる。

花が見えれば花を入れる。

こういうあたり、イタリアの文化力です。


イタリアは政治的には地味な存在になりましたが、文化的にはやはり大国ですね。低予算のイタリア映画でも、絵が良くて最後まで見れることしょっちゅうあります。予算の大きなアメリカ映画でも、飽きて途中で止めるのが多いのが反対です。

さくら


彼女のお母様は彼女が子どもの頃寝るとき、
日本のお伽話を読み聞かせてくれて今は絵を描いて暮らしてらして
。 日本は母系社会の国で、源氏に表現される女性同士の血筋や時代、
生死をも超えた様々な繋がりを思いながら、 そういえば、父親を見送るとき棺に、ぼけの花を一輪手向けたことを思い出しました。  

写真は「さくら」という名前のドレス。
もう15年も前の春につくったドレスで忘れてしまっていたのですが、ふとこの春「かいまみ」に似ているなと思い出しました。

テーマ


結婚をしたばかりの花ちるさとの君が、紫の上について話してくださったことには 紫の上には子どもがいなかったですねと。そうですね、それに夫は浮気ばかりとおこたえすると、でも、他の女性の生んだ子を可愛がって影響を与えた、そういう普遍的な 母子の関係というのは、源氏の、とても大事なテーマなんじゃないかと思えてといわれて 。

それともう一つ、
亡くなるときに紫の上が孫としてとても可愛がった匂宮に 大人になったら春には庭の梅や桜を眺めて、仏様になった私にもお供えを時々してねと 紫の上は、桜の花の枝を渡して、後の人たちに言い遺した、そうして、 大事なものを渡してゆくことというのがいちばん大切なテーマなんじゃないかと思えたと。  

花ちるさと


平成も残すところあと10日・・毎年の師走よりも「あと@日」に実感が湧いてこないのは、大きすぎる変化だからでしょうか。

桜隠しを過ぎて桜の散り始めた先日、
撮影のためにお会いしたかつての花嫁さま(薄紫の君)にお話しいただいた
紫の上の花散里への最後のうた:絶えぬべきみのりながらぞ頼まるる世々にとむすぶ中のちぎりを
花散里、はなちるさとも、本当に素敵な名前で。

最後にお会いしたあの日の天気にピッタリで、昨日撮影した「かいまみ」の、この日の名前は「花ちるさと」
にしようと思いました。

春を迎える前に撮影した雲かくれ:https://bit.ly/2VHJMgG

4つの時間


はなのいろは うつりにけりな いたづらに わかみよにふる ながめせしまに    


花の色のうたのもつ立体性というのは、
「わが身、世に経る」自分が世の中で老いてゆくと、
「わが御世に降る」つまりより大きくこの時代に雨が降ると、
「眺めせし間に」つまり見ている間に花の色が変わると、
「長雨せしまに」数日で花の色が変わると、
花の色に重なり合っている、4つの時間のこと。

桜隠し


桜の花に雪の降る、春と冬の季節が重なり合う境い目の、今日は桜隠しの日になりました。
ゴッホのかなしみという絵には、
老いた女性の背景に可憐な花が咲いている、花の色はのうたの「
花」には、現実の花と、女性である自分自身と、二重の意味がある。
ひなぎくの生地も、異なる色、異なる世界を重ね合わせて、
重層性を表します。すると動いたときに、
複雑なニュアンスが出てきます。
複雑なニュアンスが「生きている」ということ、うた、和歌のように、生命を宿せるドレスをつくりたいと思っています。
冷たい雪は花に厳しいに違いないですが、一方で、
雪が降ることは桜の散るのを止めている。
時間をとめて桜の花をこの世に留めている。
色んな見方の出来る、立体性をもったドレスをつくりたいと思います。

雲隠れ

新しい時代を迎えるにあたって、ドレスをつくってきた平成の20年余のことを振り返っています、この4月ですが。

来月には本当に新しい時代になりますので、今月、季節と時代の境い目の、まだ今だけはと、両方の時代に思いを馳せていると、日本文化って複雑さと単純さの両方が共存しているんだと。あらためて 。

このドレスは雲かく(隠)れ、源氏がテーマでした。元はかいま(垣間)みという名前。
来月を迎えたらかいまみに戻そうと思います。

長年この国の女性たちとドレスを数千もつくってきて、日本女性は文化的な存在だと思っているのですよね。だから無からでもこの方達とならつくれると思い続けているのだなと

悲しみ


このゴッホの絵、悲しみって、花の色はうつりにけりないたづらにのうたを絵にしたかのように思えます。

背景の花の咲く木も、梅の枝ぶりのように見えたり。 
初春令月、氣淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香 

令和という元号の典拠となったというこの歌は、婚礼衣装、ウェディングドレスにピッタリだと思えました。
悲しみというと、婚礼衣装には似つかわしくないのですけど(この絵も・笑)哀しみも慶びも、すべてを包み込めるような豊かさや和かさが日本文化にはあると思います

令和


令和、とても素敵な元号ですね。

一日遅れて、昨夜から今日にかけて、
まさに初春の佳き月のような色に
ちょうど昼頃に染め上がってきました。
空気が清く澄みわたって、風が柔らかく戦いで、いえ、そ
よいでいるような色合いで。
アトリエではいよいよ本格的な春シーズンが始まります。

リボンの旅(後編)

一目惚れで急きょ、また新たなこちらのピアスに、すっかり決められたそう。

なんと2wayにもなるのです。


素晴らしいです。
せっかくならお式後、身頃を長袖からビスチェに替えていただく時に、
このパールだけのスタイルにされたら!?とついお伝えしそうになってしまったのですが、


最高級のコットンケミカルレースに合わせては、やはり最高峰の、
ご新郎様のプレゼント下さった真珠のイヤリングを合わせられることになっているのでした。
(まずいです。)

そして検討に検討を重ねられた結果、当初迷われてらしたピアスも、つい購入をされてしまわれたとのこと・・
散財をしてしまった。。と懺悔をされてらしたのですけれど、
ぜんぶ可愛いですし、お仕事頑張られてるのですから、いいと思います、こういう楽しみはとても大事。
引き続きお仕事、どうか頑張って下さいませ。

リボンの旅(中編)

おつくりするヴェールのレースセレクトについてアトリエで悩んでましたところ、
ピアスセレクトについて可愛い報告メールが送られてきました。

「どちらのイヤリングがお式のドレス、身頃に合うでしょうか!?」
どちらも可愛くて選べず、またこれは困りました。

実はコルセットビスチェはご披露宴前半でのご着用、
お式の際は長袖の身頃で2wayにされます。

こちらの身頃に合うのは、丸く可愛い薔薇の花柄のレースよりも、
ボタニーク文様の繊細で上質な、バニラ色の仏製コットンケミカルレースと
スカラプが丸くなくて束ねた花々の表情が豊かな、仏製コードレース。
レースを身頃にも合わせ使って、ご希望の三枚ヴェールをおつくりしよう。

とここまで決められたのは、のろのろお返事出来ずにいる内に
「ピアス決定しました!」
とまた新たに送られてきた、ピアスのお写真のおかげでした。

リボンの旅(前編)

アンジェという名前のコルセット風ビスチェ、白いチュールスカートのドレスに

お好きなリボンのチュールヘッドドレスを合わせられたいとのこと

やはりリボンのピンクのサンダルに合わせて、ピンクチュールのリボンを試着いただいたところ
お母様がピンクの大きめの、kiki風のリボンを可愛いと、とても気に入って下さったとのことで、
当日はこんな感じのチュールヘッドドレスに、ブーケの薔薇の花の色に合わせて
ブルーグレーがかったピンク色に染めたチュールを足して完成されることに。
ビスチェにデザイン刺繍を施した瑞製のコットンケミカルレースは、最高級の純白のレースです。
もしこのビスチェに合わせるヴェールをおつくりするのであれば、
丸いバラ柄の水玉の仏製コードレースと、やはり可愛い柄の仏製リヴァーレースをあしらって
三枚重ねのマリアフェイスヴェールをおつくりしたく思いました。

ブラフマンとサラスヴァティー

お客様とはいろいろお話させていただくのですが、先日お勧めいただいた東野圭吾さんの、代表作の「容疑者Xの献身」を読みました。インド的、仏教的な作品です。

絶望した数学者が、お隣の子持ちの独身女性に恋して、彼女の犯した殺人事件の罪をかぶろうとする話です。大変感動的なストーリーですし、なによりこういう仏教的な世界が今の日本に受け入れられていることに感銘を受けました。

お隣の女性は、「べんてん亭」というお弁当屋で働いています。数学者は彼女目当てにお弁当を毎日買いに行きます。
べんてんというのは、つまり弁財天です。
弁財天というのは元はインドの神様で、サラスヴァティーと言います。

 

サラスヴァティーの夫はブラフマンです。ブラフマンは宇宙創造の神、知恵の神です。

だから、数学者はものすごく頭がよく、お隣の女性を助けるために、
「1日ずれた世界」を創造しようとします。
1日だけずれているので、もちろんお隣の女性は完全なアリバイがあります。

数学者は創造した世界を完成すべく、警察に自首します。
自首で完全な犯人の入れ替えが完成しました。
犯罪を犯したのは数学者ということになりました。
(という入れ替えを完成させるために、数学者は関係ない人を一人殺しています)

でも、罪を背負ってくれる数学者にもうしわけなくなり、耐え切れなくなった隣の女性は、結局警察に自首します。

「あたしも償います。罰を受けます。石神(というのが数学者の名前です。やはり神なのです)さんと一緒に罰を受けます。あたしにで出来ることはそれだけです。あなたのために出来ることはそれだけです。ごめんなさい。ごめんなさい」

結局、ブラフマンとサラスヴァティーは(別の刑務所ですが)同じ受刑者という運命を歩むことになります。数学者の努力は無駄になりました。お隣の女性の隠蔽工作も無駄でした。元来数学者が恋をしたのは、絶望して自殺しようとしたとき、たまたまとなりの女性が引越しの挨拶に来たからです。だから数学者にとって彼女の犠牲になることは問題ではなかった。命の恩人だったからです。ただ、彼女を刑務所に入れないために頑張ったのに、結局彼女は自首してしまった。自分の人生をささげたのに、報われなかった。

しかしブラフマンとサラスヴァティーは、元来夫婦なのです。夫婦が結局同じ道を歩めることになったのです。ブラフマンは別世界の創造には失敗し慟哭しますが、サラスヴァティーとの結びつきには成功したと言うべきでしょう。

 

新嘗祭

昨日は新嘗祭、道長がうたを詠んで1000年目の満月の日で、お式をされた花嫁様、ご結納をされたご新婦さまもいらして、東京オリンピックに続いて大阪万博のニュースも入ってきた、とても晴れの日だった気がします。

百日紅

百日紅

英名:Crape myrtle。

様々な素材と色合いのピンクのレースモチーフを重ねておつくりした土台。フィッティングを重ねて花々を重ねてゆく内に段々表情が変わってゆきました

百日紅のピンクが主役の色でした。

フランス製のケミカルレースとスイス製のコットンケミカルンレースは、濃いピンク紅色に染めてアクセントに。

仏製リヴァーレースの一部は水のりで加工して、胸元に百日紅の花が空に向かって咲き上がるように、木に咲く花の葉と枝の流れるように背中に刺繍をしました。

パールグレーやパープルを紅色に加えながら、グラデーションで様々なピンク色をつくって染めたスカート。内側に濃い百日紅色のレース刺繍を隠し透かせました。

お式後はオペラ鑑賞に着てゆけるようなドレスに、スカート丈をカットしてリフォームしてゆきます。アンティークなグレーの素材刺繍を見頃に施して、花模様に陰をお付けしてゆくかもしれません。

 

コラム「数値計算能力」

ドレスに限らずなんでも、表面の装飾もそれなりに大事ですが、
表に見えない内側の構造はもっと大事です。
つまり、一番大事なことは大抵隠されています。

トヨタ自動車の車のデザインに好き嫌いはあるかと思いますが、
(私もハイセンスとは思いません)
エンジン、バッテリー、モーターなどの駆動機関の研究は、
世界一なのです。だから今のトヨタがある。

ドレスは車ほどは、大事なことは隠されていません。
ですが似たようなことはあります。

もっとも有名なドレスデザイナーは、ココ・シャネルですが、
彼女は車で言えばエンジンの研究、
服屋の場合はパターン(型紙)技術は、たいしたことありません。
でも、すばらしい服です。
たとえばこちら

楽しいドレスですね。でも実は、かなりの素人仕事なのです。服製造やっているとわかります。なんとなく全体がゆがんでいる。裾のラインのコントロールが不十分な感じがある。間違いなく目を引くドレスではありますが。

パターン(型紙)技術がもっとも高かったのは、
マドレーヌ・ヴィオネという人です。

たとえばこちら

体にすっと吸い付くようなドレスです。縫いの量は少なく、実は使用生地量もシャネルより大幅に少ないのですが、ドレッシーな雰囲気を持っています。もっとも目立つのはシャネルのほうですね。

両者の差は、数値計算能力です。

というと「私は数学大嫌い」と怯えられそうなのですが、日本女性の数値計算能力実は歴史的に高いのです。戦国時代に日本に来たイエズス会の伝道師が、驚きを持って書いているのが、
「なんと、日本女性は計算ができる。おつりの計算なんか男性より速い」
ということです。

当時のイエズス会といえば、今日のグーグルのような情報産業でして、世界中の情報を持っています。本国スペインでは女性はほとんど計算できない、ほかのヨーロッパ人でも女性は普通は計算できない、イスラムの女性も、インドの女性も、中国の女性も計算できない、日本女性がなぜか計算能力を持っている、下手すれば男性より早い。ようするに全体の水準が高すぎるのと、苦手を苦にしすぎるまじめな性格で、数学嫌う人が多いだけです。

だから日本のドレスは最終的に、シャネルの華やかさとヴィオネの計算能力を統合するものができるはずで、そちらに向かって一応私たちも努力しているつもりです。

短期攻略・ファッション史・7・服の建築家1

コラム「葛飾応為」

レンブラントの絵画の修復が話題になっています。
(レンブラント・ファン・レイン 「夜警」)
レンブラントの絵はコントラストが強く、暗闇から浮かび上がるような雰囲気が特徴です。
(レオナルド・ダ・ビンチ 「洗礼者ヨハネ」)
レンブラントに限らず、レオナルド、カラバッジョもそうですから、
これは西洋特有の文化ですね。今での西洋の映画はこういう照明の当て方が好きです。
ということをいち早く気づいた日本画家が居ました。
西洋絵画の良いところはコントラストだ、
早速日本に取り入れよう。
気づいたひとは葛飾応為、葛飾北斎の娘、つまり女流画家です。
日本女性は普通に江戸時代から美術活動していたのですね。
(葛飾応為 「吉原格子先之図(こうしさきのず)」)
北斎は天才ですし、西洋絵画の研究も熱心ですが、
コントラストの表現に関しては、はっきり娘の応為が数段上です。
(葛飾応為 「春夜美人図」)
西洋文化の受容は明治以降と考えられがちですが、
科学技術同様、美術でも昔からよく研究されていたのですね。
それを女性がやったというのは、凄いことです。
もちろん西洋も西洋で日本絵画を勉強していました。
たとえばゴッホのこの絵は
(ゴッホ 「梅の開花」
広重の模写ですね
(安藤広重 「亀戸梅屋舗(うめやしき)」)
昨日デザイナーが、伊藤若冲の梅の花と
ゴッホの花咲くアーモンドの絵も、似ていると言っていました。
若冲は浮世絵、つまり版画ではなく普通の絵なので、
たくさんプリントするわけではありません。
現物がフランスに輸入されたとは考えにくいですが、
模写が渡ってゴッホが見たのかもしれません。
文化というのはこうやって世界を行ったりきたりするもので、
葛飾応為やゴッホは、それをいち早く研究できる感受性を持っていたようです。

 

コラム「マリー・アントワネットの宝石」後編

「リラックスしたスタイルで民衆に接する」と書きましたが、

実は彼女はプチ・トリアノン宮でそういうことをやり始めていました。
リラックスした服装を着ていますが、これが後年のエンパイアドレスの先駆になっています。

後年の「レカミエ夫人」のようなエンパイアラインは、普通に考えればイスラム風衣装でして、


イスラム世界と西洋世界の架け橋を長年やってきたハプスブルグ家の娘、マリー・アントワネットが、イスラム風衣装を始めるのは、理にかなっています。これは後年ポワレやシャネルがやったことでして、本当の先駆者はアントワネットなのですね。

短期攻略ファッション史・3・ポワレ~コスプレ帝国主義者

これをもっと大々的にできれば、彼女は新しい時代のリーダーになれていたのかもしれません。でも実行力が決定的に不足していました。客とも会わず引きこもっていました。それでは新しいスタイルを確立しても、意味がありません。

ベルサイユの衣装、スタイルをまるごと変えるような大変革をし、貴族にもそれを要請していたらどうだったでしょう。もし優秀なブレーンでもついていれば成功して王家は存続、フランスは今頃世界でも段違いの文化大国だったでしょう。

ほんの20年前にはまだフランスは世界の文化の中心でした。
今でも文化の香りは馥郁たるものがありますが、でも昔に比べれば地位が落ちました。王家の消滅から徐々に。

コラム「マリー・アントワネットの宝石」前編

マリー・アントワネットの秘蔵の宝石が200年ぶりに公開されたそうです。
可愛いとデザイナーが騒いでおりました。

マリー・アントワネットは、首飾り事件などで無駄遣いが有名になってしまいました。しかし「王妃が高価な宝石を買って贅沢したから、民衆は生活が苦しかった」などというのは、完全に間違いです。国家財政の規模に比べれば、宝石なんぞはいくら買っても誤差の範囲内です。

ブルボン王朝は、先々代のルイ14世の後半から国家財政としては破綻寸前でした。

次のルイ15世の時に「ジョン・ロー」という、稀代の詐欺師にして史上最大の経済学者、あるいは史上最大の詐欺師にして稀代の経済学者かもしれませんが、どっちでもよいです、その人が大規模な財政離れ業を演じまして、「ミシシッピー会社」というのを立ち上げて、一時期うまくいきました。しかし最後は結局失敗しまして、金の切れ目が縁の切れ目、というわけでその時点でブルボン王朝の命運は終わっていました。その後のルイ16世夫妻の責任は、さほどないのです。

江戸幕府が倒れて明治政府ができたのは、ペリー来航のように西洋列強の軍事圧力が高まり、強力な中央政府をつくる必要が差し迫ったからです。フランスも同じでして、絶対君主といっても統治力が弱かった。国民をひとつにまとめるような政治力ではなかった。

統治力の不足を意識しているルイ14世は、たとえばベルサイユ宮殿をつくって、舞踏会三昧をして、王の力を誇示して、人々の気持ちを自分にひきつけようとした(西洋の王様は多かれ少なかれこういうプレゼン努力が欠かせない存在です。日本の天皇、将軍に比べると生存競争ハードなのです)。

その結果王家の財政が破綻寸前になったのですから、無駄な努力だったのですが、マリー・アントワネットの浪費は14世の努力を踏襲しただけで、彼女の責任ではないです。
「今はこのやり方ではだめだ、もっと新しい事を考えないと」と思えなかったのはそれは彼女の責任ですが。

では「新しい事」とはなにか。

たとえば後年シャネルがしたように、
「価値ある宝石をつけたからといって、それで女が豊かになるわけではない」
と宣言して、
リラックスしたスタイルで民衆に接する、とかすればよかったかもしれません。

短期攻略ファッション史・4・シャネル~宝石ニクソン

(続く)

コラム「ファッション外交」

なにを着るか、ということに関して日本社会はかなり楽な社会です。ドレスコードが無いに等しい。実は西洋は伝統的に大変です。現在でもものすごく頭を使っています。

たとえばトランプさん。

2017年11月、トランプは訪中しましたが、ネクタイが地味です。あまりにも弱気だ、ということで批判を受けたくらいです。メラニア夫人も最大限の心遣いですね。これならば中国の面子も立ちます。

「なぜここまで気を使うのか?」、それは合衆国大統領として、できるだけ戦争はしない、世界と平和にしてゆく活動を頑張っていると、国民に印象づけるためです。おそらくこの時点で、1年以内の対中国のアクションを決意していたと思われます。

現在「ペンス演説」というものが話題になっています。アメリカのペンス副大統領が10月6日に50分もの長い演説をしまして、アメリカと中国はほぼ戦争状態に入った、と宣言しました。

https://www.newshonyaku.com/usa/20181009

これは昨日今日考え付いたことではありません。戦争しかけるアメリカにも経済的に多大の出血を強いることですから、検討に検討を重ねて打ち出した方針です。つまり、中国訪問の時には、すでにあらあらの計画が立っています。

そしてこの1年トランプは「さんざん努力したのだから、この状態にいたったことは、やむなし」ということを、アメリ国民に納得してもらうために、外交努力をしていたのでしょう。

さて、あなたがメラニアさんだとして、1年後くらいに中国との関係は決定的に破綻するとして、それでも訪中しなければならないとして、どんな服を選びますか?

悩ましいですね。同窓会や結婚式への参加の場合とは比べ物になりません。

コラム「メラニア夫人」

トランプ大統領夫人メラニアさんがアフリカを訪問しました。
サファリルックで、「植民地主義だ」と物議をかもしたが、
トランプ大統領関係は、なんでもかんでも悪口言われる傾向にあるので、
悪口自体に意味はありません。

ではメラニアさんがなにも考えずにファッション決めているかというと、
そんなことは絶対にありません。
アメリカ大統領夫人くらいになりますと、
毎回の外遊に意味がありますから、
ファッションも毎回意味があります。

エジプトでの写真です。
スフィンクスを見て、ナポレオンの名言、
「兵士諸君、4000年の歴史が見下ろしている」を思い出せると、
意味が掴めてきます。

拡大するとこんな感じです。
明らかにココ・シャネルを意識しています。

と、ここからは国際政治の話ですが、
アフリカは元来ヨーロッパ諸国、特にフランスの影響が強いところです。
植民地が多かったですから。
最近は中国も盛んに触手を伸ばしていました。

そこへトランプ夫人のアフリカ歴訪です。
シャネルと同じデザインコンセプトのスタイルで、
スフィンクスの下にゆく。

「私たち アメリカこそあらたなアフリカの指導者である 」
という意味です。

メラニア夫人の服のデザインが、シャネルを踏襲というのは、
ファッション業界の人はだれでもわかります。

デザイナーいわく、30年近く前の米国、まだヨーロッパに文化の追いついていなかった頃のNYのラルフローレンに、エジプトの麻で仕立てられた、素朴なのにこの上なく美しく軽いジャケットがあったのだと。

アメリカ文化はその後発展、改良していって、とうとうココ・シャネルに匹敵するレベルに到達したのです。

そして、メラニア夫人のアフリカ歴訪が、
アフリカにおけるアメリカの主導権確保を狙ったものだということは、
国際政治に興味があればだれでもわかります。

しかし同時両方に考えられる人が、あまり居ない。
西洋各国の首脳の夫人たちは、常に両方考えられるようです。

短期攻略ファッション史・9・ディオール

コラム「消え行く」

ピンクの前に染めていたのは、なんとも言いようもない、
特徴のない薄い色でした。

ドレス名は「かいまみ」
なにかを垣間見るような、
ようするに実体のあまりないドレスになりました。

ドレスを着られるお客様とお話したとき、
「19歳の時に、初めて長谷川等伯の松林図屏風を見て、消え行く松の木の姿に、水墨画のイメージが変わった」といわれていました。

東京国立博物館の、「松林図屏風」。
日本の「国宝」のうち最高のものを挙げろといわれれば、たいていの人がこの屏風か、法隆寺の「百済観音」を挙げます。いわば、国宝中の国宝です。

両者に共通しているのは、「実体感のなさ」、自己主張が少なく、消え入るようにこの世に存在していることです。

ドレスは元来、自己主張的なものです。激しく暴力的な西洋社会で、王侯貴族たちがマッチョな体のラインを顕示するように、また自身の財力を誇示するように作らせた、いわば一種の支配システムです(西洋の服は男性のものもその傾向があります)。

でも、われわれ日本人のエゴは彼らほどの強靭さがない。その理由の詮索はおいておきまして、ともかくドレスと日本人は、少し距離があるのですね。ドレスと西洋人よりも、少し長めの距離が。

だから、「日本女性ももっと強いエゴを持つべきだ」という道もありますが、かいまみるようなドレスを作る道もあります。

プロセス

コラム「東京のピンク」

写真のピンクの生地は、思うような色が出せないとデザイナーが
「江戸と伊勢の繋がるところの色」など鬱々と言いながら延々と染めていたものです。

彼女の祖母は三河の呉服屋、祖父は伊勢出身なのですが、
いわく、伊勢の着物文化は東京では重要なのだそうで。

昔江戸には「伊勢屋、稲荷に犬のなんとか」というフレーズがあったくらいで、
伊勢出身の商人が大挙江戸に襲来していまして、
そういえば代表的な呉服屋の三井さんも、伊勢松坂が本拠地です。

東海道中膝栗毛もお伊勢参りの話で、
江戸と伊勢は、遠いようで近い存在ですね。

なんで伊勢がそんなに繁盛したのか、
日本史に詳しい向きがなんと言われるかしりませんが、
私は山田羽書(やまだはがき)の存在だと思っています。
山田羽書は1610年ころから伊勢で発行されていた、日本最古の紙幣で、
(アベノミクスで景気が上向くのと同様)
マネーが増えれば好景気になります。

好景気になった伊勢地方の商品が、経営拡大して大量に江戸に入り、
三井もそのうちの一つで、江戸の服飾文化を支えました。
そういえば徳川の前の北条も、
初代の北条早雲も旧名「伊勢新九朗」というくらいで、
距離が遠いから文化も遠いわけではないようです。

「明治時代の着物の紅ピンクの次のピンク色」とも言っていました。

何しろこのピンクの色が出たのは、やり続けて挙げ句に失敗をした
直後のことで、偶然だった、運がよかった、とのことです。

2016-08-15

お二人で日本から、夏季休暇中にフランスに渡られて。
現地からお写真お送りいただきました、お着物姿も見たいなとお話したのを覚えていて下さったのですね・・ありがとうございます・・。
パリの区役所で婚姻届を出される際には振り袖で、郊外のお城では白いレースとシルクオーガンジーのドレスで。白と朱赤色の、絞りでしょうか・・?古典柄の着物と金の帯が、石造りの区役所のエントランスとよく
似合われて。本当に可愛らしいです。
パリの石造りの古い建物にはいまだにエアコンが無いからとこぼしてらしたので・・今年は欧州も猛暑でしたので、透け感のある軽やかなドレスに仕上げられてよかったです。

 

2018/07/04

 

週末に花嫁さまのヘッドに飾る初夏の花たち。梅雨が嬉しいのでしょうか、初夏の花はみな爽やかで豊かで本当に綺麗

2018/06/30

トレーンの生地が水のように流れるような、スカートはソフトマーメイドラインで。

2018/06/24

生地の色合い、レース文様の参考にさせていただく絵

2018/06/23

身頃のパターンデザイン・・立衿と長袖の部分の参照画

2018/06/20

オーダーの場合には、お好きな絵など色々お送りいただいて、デザイン考えさせていただくのですが、言葉をお送りいただくこともあります。 「I love youをどうやって和訳するかという本に載っていた一節で、素敵だなぁと思ったので」