さくら


彼女のお母様は彼女が子どもの頃寝るとき、
日本のお伽話を読み聞かせてくれて今は絵を描いて暮らしてらして
。 日本は母系社会の国で、源氏に表現される女性同士の血筋や時代、
生死をも超えた様々な繋がりを思いながら、 そういえば、父親を見送るとき棺に、ぼけの花を一輪手向けたことを思い出しました。  

写真は「さくら」という名前のドレス。
もう15年も前の春につくったドレスで忘れてしまっていたのですが、ふとこの春「かいまみ」に似ているなと思い出しました。

テーマ


結婚をしたばかりの花ちるさとの君が、紫の上について話してくださったことには 紫の上には子どもがいなかったですねと。そうですね、それに夫は浮気ばかりとおこたえすると、でも、他の女性の生んだ子を可愛がって影響を与えた、そういう普遍的な 母子の関係というのは、源氏の、とても大事なテーマなんじゃないかと思えてといわれて 。

それともう一つ、
亡くなるときに紫の上が孫としてとても可愛がった匂宮に 大人になったら春には庭の梅や桜を眺めて、仏様になった私にもお供えを時々してねと 紫の上は、桜の花の枝を渡して、後の人たちに言い遺した、そうして、 大事なものを渡してゆくことというのがいちばん大切なテーマなんじゃないかと思えたと。  

花ちるさと


平成も残すところあと10日・・毎年の師走よりも「あと@日」に実感が湧いてこないのは、大きすぎる変化だからでしょうか。

桜隠しを過ぎて桜の散り始めた先日、
撮影のためにお会いしたかつての花嫁さま(薄紫の君)にお話しいただいた
紫の上の花散里への最後のうた:絶えぬべきみのりながらぞ頼まるる世々にとむすぶ中のちぎりを
花散里、はなちるさとも、本当に素敵な名前で。

最後にお会いしたあの日の天気にピッタリで、昨日撮影した「かいまみ」の、この日の名前は「花ちるさと」
にしようと思いました。

春を迎える前に撮影した雲かくれ:https://bit.ly/2VHJMgG

4つの時間


はなのいろは うつりにけりな いたづらに わかみよにふる ながめせしまに    


花の色のうたのもつ立体性というのは、
「わが身、世に経る」自分が世の中で老いてゆくと、
「わが御世に降る」つまりより大きくこの時代に雨が降ると、
「眺めせし間に」つまり見ている間に花の色が変わると、
「長雨せしまに」数日で花の色が変わると、
花の色に重なり合っている、4つの時間のこと。

桜隠し


桜の花に雪の降る、春と冬の季節が重なり合う境い目の、今日は桜隠しの日になりました。
ゴッホのかなしみという絵には、
老いた女性の背景に可憐な花が咲いている、花の色はのうたの「
花」には、現実の花と、女性である自分自身と、二重の意味がある。
ひなぎくの生地も、異なる色、異なる世界を重ね合わせて、
重層性を表します。すると動いたときに、
複雑なニュアンスが出てきます。
複雑なニュアンスが「生きている」ということ、うた、和歌のように、生命を宿せるドレスをつくりたいと思っています。
冷たい雪は花に厳しいに違いないですが、一方で、
雪が降ることは桜の散るのを止めている。
時間をとめて桜の花をこの世に留めている。
色んな見方の出来る、立体性をもったドレスをつくりたいと思います。

雲隠れ

新しい時代を迎えるにあたって、ドレスをつくってきた平成の20年余のことを振り返っています、この4月ですが。

来月には本当に新しい時代になりますので、今月、季節と時代の境い目の、まだ今だけはと、両方の時代に思いを馳せていると、日本文化って複雑さと単純さの両方が共存しているんだと。あらためて 。

このドレスは雲かく(隠)れ、源氏がテーマでした。元はかいま(垣間)みという名前。
来月を迎えたらかいまみに戻そうと思います。

長年この国の女性たちとドレスを数千もつくってきて、日本女性は文化的な存在だと思っているのですよね。だから無からでもこの方達とならつくれると思い続けているのだなと

悲しみ


このゴッホの絵、悲しみって、花の色はうつりにけりないたづらにのうたを絵にしたかのように思えます。

背景の花の咲く木も、梅の枝ぶりのように見えたり。 
初春令月、氣淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香 

令和という元号の典拠となったというこの歌は、婚礼衣装、ウェディングドレスにピッタリだと思えました。
悲しみというと、婚礼衣装には似つかわしくないのですけど(この絵も・笑)哀しみも慶びも、すべてを包み込めるような豊かさや和かさが日本文化にはあると思います

令和


令和、とても素敵な元号ですね。

一日遅れて、昨夜から今日にかけて、
まさに初春の佳き月のような色に
ちょうど昼頃に染め上がってきました。
空気が清く澄みわたって、風が柔らかく戦いで、いえ、そ
よいでいるような色合いで。
アトリエではいよいよ本格的な春シーズンが始まります。

アトリエワーク

リボンの旅(後編)

一目惚れで急きょ、また新たなこちらのピアスに、すっかり決められたそう。

なんと2wayにもなるのです。


素晴らしいです。
せっかくならお式後、身頃を長袖からビスチェに替えていただく時に、
このパールだけのスタイルにされたら!?とついお伝えしそうになってしまったのですが、


最高級のコットンケミカルレースに合わせては、やはり最高峰の、
ご新郎様のプレゼント下さった真珠のイヤリングを合わせられることになっているのでした。
(まずいです。)

そして検討に検討を重ねられた結果、当初迷われてらしたピアスも、つい購入をされてしまわれたとのこと・・
散財をしてしまった。。と懺悔をされてらしたのですけれど、
ぜんぶ可愛いですし、お仕事頑張られてるのですから、いいと思います、こういう楽しみはとても大事。
引き続きお仕事、どうか頑張って下さいませ。

リボンの旅(中編)

おつくりするヴェールのレースセレクトについてアトリエで悩んでましたところ、
ピアスセレクトについて可愛い報告メールが送られてきました。

「どちらのイヤリングがお式のドレス、身頃に合うでしょうか!?」
どちらも可愛くて選べず、またこれは困りました。

実はコルセットビスチェはご披露宴前半でのご着用、
お式の際は長袖の身頃で2wayにされます。

こちらの身頃に合うのは、丸く可愛い薔薇の花柄のレースよりも、
ボタニーク文様の繊細で上質な、バニラ色の仏製コットンケミカルレースと
スカラプが丸くなくて束ねた花々の表情が豊かな、仏製コードレース。
レースを身頃にも合わせ使って、ご希望の三枚ヴェールをおつくりしよう。

とここまで決められたのは、のろのろお返事出来ずにいる内に
「ピアス決定しました!」
とまた新たに送られてきた、ピアスのお写真のおかげでした。

リボンの旅(前編)

アンジェという名前のコルセット風ビスチェ、白いチュールスカートのドレスに

お好きなリボンのチュールヘッドドレスを合わせられたいとのこと

やはりリボンのピンクのサンダルに合わせて、ピンクチュールのリボンを試着いただいたところ
お母様がピンクの大きめの、kiki風のリボンを可愛いと、とても気に入って下さったとのことで、
当日はこんな感じのチュールヘッドドレスに、ブーケの薔薇の花の色に合わせて
ブルーグレーがかったピンク色に染めたチュールを足して完成されることに。
ビスチェにデザイン刺繍を施した瑞製のコットンケミカルレースは、最高級の純白のレースです。
もしこのビスチェに合わせるヴェールをおつくりするのであれば、
丸いバラ柄の水玉の仏製コードレースと、やはり可愛い柄の仏製リヴァーレースをあしらって
三枚重ねのマリアフェイスヴェールをおつくりしたく思いました。

ブラフマンとサラスヴァティー

お客様とはいろいろお話させていただくのですが、先日お勧めいただいた東野圭吾さんの、代表作の「容疑者Xの献身」を読みました。インド的、仏教的な作品です。

絶望した数学者が、お隣の子持ちの独身女性に恋して、彼女の犯した殺人事件の罪をかぶろうとする話です。大変感動的なストーリーですし、なによりこういう仏教的な世界が今の日本に受け入れられていることに感銘を受けました。

お隣の女性は、「べんてん亭」というお弁当屋で働いています。数学者は彼女目当てにお弁当を毎日買いに行きます。
べんてんというのは、つまり弁財天です。
弁財天というのは元はインドの神様で、サラスヴァティーと言います。

 

サラスヴァティーの夫はブラフマンです。ブラフマンは宇宙創造の神、知恵の神です。

だから、数学者はものすごく頭がよく、お隣の女性を助けるために、
「1日ずれた世界」を創造しようとします。
1日だけずれているので、もちろんお隣の女性は完全なアリバイがあります。

数学者は創造した世界を完成すべく、警察に自首します。
自首で完全な犯人の入れ替えが完成しました。
犯罪を犯したのは数学者ということになりました。
(という入れ替えを完成させるために、数学者は関係ない人を一人殺しています)

でも、罪を背負ってくれる数学者にもうしわけなくなり、耐え切れなくなった隣の女性は、結局警察に自首します。

「あたしも償います。罰を受けます。石神(というのが数学者の名前です。やはり神なのです)さんと一緒に罰を受けます。あたしにで出来ることはそれだけです。あなたのために出来ることはそれだけです。ごめんなさい。ごめんなさい」

結局、ブラフマンとサラスヴァティーは(別の刑務所ですが)同じ受刑者という運命を歩むことになります。数学者の努力は無駄になりました。お隣の女性の隠蔽工作も無駄でした。元来数学者が恋をしたのは、絶望して自殺しようとしたとき、たまたまとなりの女性が引越しの挨拶に来たからです。だから数学者にとって彼女の犠牲になることは問題ではなかった。命の恩人だったからです。ただ、彼女を刑務所に入れないために頑張ったのに、結局彼女は自首してしまった。自分の人生をささげたのに、報われなかった。

しかしブラフマンとサラスヴァティーは、元来夫婦なのです。夫婦が結局同じ道を歩めることになったのです。ブラフマンは別世界の創造には失敗し慟哭しますが、サラスヴァティーとの結びつきには成功したと言うべきでしょう。

 

・ ・ 月の花嫁(マグリットの貴婦人と木の花かぐや姫)・ ・

お式直前のKaoriさん。いつかどこかで見かけたようなご表情です。

Kaoriさんの、表現のテーマはミュシャでしたが、

根底のテーマは、マグリットでらしたように思います。

竹林の中でのお式は、竹取物語の月に帰るかぐや(赫映)姫を思わせるようで、

秋桜を飾ったリハの夜での、さくや(咲耶)姫のようなKaoriさんを思い出したのでした。

このマグリットの、明るい空と鳥と雲と卵の「春」という絵の

夜バージョンには、「帰還」という題名が付けられています。

「風」という名前の、御茶ノ水のレストランのお庭で、

Kaoriさんのお式がはじまりました。

→当日のお写真へ

・ ・ 月の女神アルテミス(星の花嫁)・ ・

Kaoriさんの、お式当日のお色直し姿。

Kaoriさんの願いは、ミュシャの「フラワー」のような、

フラワーコーディネートでした。

鉢植えの、白い秋桜を摘んで飾った、

ヘアメイクリハーサルコーディネートを経て、

ひとえ咲きのバラ、ピュアを中心に、色とりどりのトルコ桔梗を、

淡いグリーンを基調に、寒色系パステルトーンでまとめ上げて。

「いと際立った女人(ひと)として輝く様(さま)は、

日の沈んで薔薇色の 指もつ月が輝き出(い)で、

星の光を奪うにも似て 差し出(い)でる月こそ

からい海面(うなも)や一面に  花の咲き添う野原(のばら)の上に、

輝く白銀(ぎん)の光を降り注ぎ 白露は玉なして地に滴(したた)り、

薔薇やたおやかな芳香草(アントリュスカ)、

花うるわしの蜜蓮華(メリロートス)が」 ほころんで。

Kaoriさんのお式当日の花嫁姿を通して、「夢十夜」の

一夜目が、ギリシアの古代詩に通じていたことに気がつきました。

 

 

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・ ・ 桜草と秋桜、羽根と心根 ・ ・

秋の桜、白いコスモスを飾って、ヘアメイクコーディネートリハーサル。

バラの花で着飾るつもりのドレスが、

Kaoriさんの心の花のドレスに変わった、エピローグ。

Kaoriさんが送ってくれた3枚の絵の

残る1枚は、ミュシャの「桜草」と「羽根」でした‘。

桜の花のような一重咲きのバラ、「ピュア」を、

リハーサルの前夜から用意していたのですが、

翌朝にはすっかりしおれてしまっていたため、

あわてて急遽、鉢植えの秋桜をご用意しました。

秋桜の花びらは、赤とんぼの羽根のようでもあり、

着物や浴衣のような、日本的なドレス姿になりました

「黒い瞳の中に鮮やかに見えた自分の姿がぼうっとくずれてきた。

静かな水が動いて写る影を乱したように流れ出したと思ったら、

眼がぱちりと閉じて長い睫(まつげ)の間から涙が頬へ垂れた。

すらりと揺らぐ茎の頂に心持ち首を傾けていた細長い一輪の蕾が、

 ふっくらと弁(はなびら)を開くと真白な花が鼻の先で匂った。

遥かの上からぽたりと露が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。

露の滴(したた)る、白い花弁(はなびら)に」 くちづけて。

夢十夜の一夜目は、結婚の物語だったことに、Kaoriさんの

花嫁衣裳をつくらせていただいて、あらためて気がつきました。

 

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