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ウェディングドレスのプレタラインです。
プレタラインは、花嫁のご希望に添ってデザインをおこし、
春
夏
秋
冬
カラードレスのプレタラインです。
花嫁のご希望に添って生地の色を染めてつくっています。
春
夏
秋
冬
昨日は新嘗祭、道長がうたを詠んで1000年目の満月の日で、お式をされた花嫁様、ご結納をされたご新婦さまもいらして、東京オリンピックに続いて大阪万博のニュースも入ってきた、とても晴れの日だった気がします。
百日紅
英名:Crape myrtle。
様々な素材と色合いのピンクのレースモチーフを重ねておつくりした土台。フィッティングを重ねて花々を重ねてゆく内に段々表情が変わってゆきました
百日紅のピンクが主役の色でした。
フランス製のケミカルレースとスイス製のコットンケミカルンレースは、濃いピンク紅色に染めてアクセントに。
仏製リヴァーレースの一部は水のりで加工して、胸元に百日紅の花が空に向かって咲き上がるように、木に咲く花の葉と枝の流れるように背中に刺繍をしました。
パールグレーやパープルを紅色に加えながら、グラデーションで様々なピンク色をつくって染めたスカート。内側に濃い百日紅色のレース刺繍を隠し透かせました。
お式後はオペラ鑑賞に着てゆけるようなドレスに、スカート丈をカットしてリフォームしてゆきます。アンティークなグレーの素材刺繍を見頃に施して、花模様に陰をお付けしてゆくかもしれません。
百日紅。 pic.twitter.com/Vu6gwGZkZa
— ひなぎく(Daisy) (@riesiesta) November 7, 2018
ドレスに限らずなんでも、表面の装飾もそれなりに大事ですが、
表に見えない内側の構造はもっと大事です。
つまり、一番大事なことは大抵隠されています。
トヨタ自動車の車のデザインに好き嫌いはあるかと思いますが、
(私もハイセンスとは思いません)
エンジン、バッテリー、モーターなどの駆動機関の研究は、
世界一なのです。だから今のトヨタがある。
ドレスは車ほどは、大事なことは隠されていません。
ですが似たようなことはあります。
もっとも有名なドレスデザイナーは、ココ・シャネルですが、
彼女は車で言えばエンジンの研究、
服屋の場合はパターン(型紙)技術は、たいしたことありません。
でも、すばらしい服です。
たとえばこちら
楽しいドレスですね。でも実は、かなりの素人仕事なのです。服製造やっているとわかります。なんとなく全体がゆがんでいる。裾のラインのコントロールが不十分な感じがある。間違いなく目を引くドレスではありますが。
パターン(型紙)技術がもっとも高かったのは、
マドレーヌ・ヴィオネという人です。
たとえばこちら
体にすっと吸い付くようなドレスです。縫いの量は少なく、実は使用生地量もシャネルより大幅に少ないのですが、ドレッシーな雰囲気を持っています。もっとも目立つのはシャネルのほうですね。
両者の差は、数値計算能力です。
というと「私は数学大嫌い」と怯えられそうなのですが、日本女性の数値計算能力実は歴史的に高いのです。戦国時代に日本に来たイエズス会の伝道師が、驚きを持って書いているのが、
「なんと、日本女性は計算ができる。おつりの計算なんか男性より速い」
ということです。
当時のイエズス会といえば、今日のグーグルのような情報産業でして、世界中の情報を持っています。本国スペインでは女性はほとんど計算できない、ほかのヨーロッパ人でも女性は普通は計算できない、イスラムの女性も、インドの女性も、中国の女性も計算できない、日本女性がなぜか計算能力を持っている、下手すれば男性より早い。ようするに全体の水準が高すぎるのと、苦手を苦にしすぎるまじめな性格で、数学嫌う人が多いだけです。
だから日本のドレスは最終的に、シャネルの華やかさとヴィオネの計算能力を統合するものができるはずで、そちらに向かって一応私たちも努力しているつもりです。
「リラックスしたスタイルで民衆に接する」と書きましたが、
実は彼女はプチ・トリアノン宮でそういうことをやり始めていました。
リラックスした服装を着ていますが、これが後年のエンパイアドレスの先駆になっています。
後年の「レカミエ夫人」のようなエンパイアラインは、普通に考えればイスラム風衣装でして、
イスラム世界と西洋世界の架け橋を長年やってきたハプスブルグ家の娘、マリー・アントワネットが、イスラム風衣装を始めるのは、理にかなっています。これは後年ポワレやシャネルがやったことでして、本当の先駆者はアントワネットなのですね。
これをもっと大々的にできれば、彼女は新しい時代のリーダーになれていたのかもしれません。でも実行力が決定的に不足していました。客とも会わず引きこもっていました。それでは新しいスタイルを確立しても、意味がありません。
ベルサイユの衣装、スタイルをまるごと変えるような大変革をし、貴族にもそれを要請していたらどうだったでしょう。もし優秀なブレーンでもついていれば成功して王家は存続、フランスは今頃世界でも段違いの文化大国だったでしょう。
ほんの20年前にはまだフランスは世界の文化の中心でした。
今でも文化の香りは馥郁たるものがありますが、でも昔に比べれば地位が落ちました。王家の消滅から徐々に。
マリー・アントワネットの秘蔵の宝石が200年ぶりに公開されたそうです。
可愛いとデザイナーが騒いでおりました。
マリー・アントワネットは、首飾り事件などで無駄遣いが有名になってしまいました。しかし「王妃が高価な宝石を買って贅沢したから、民衆は生活が苦しかった」などというのは、完全に間違いです。国家財政の規模に比べれば、宝石なんぞはいくら買っても誤差の範囲内です。
ブルボン王朝は、先々代のルイ14世の後半から国家財政としては破綻寸前でした。
次のルイ15世の時に「ジョン・ロー」という、稀代の詐欺師にして史上最大の経済学者、あるいは史上最大の詐欺師にして稀代の経済学者かもしれませんが、どっちでもよいです、その人が大規模な財政離れ業を演じまして、「ミシシッピー会社」というのを立ち上げて、一時期うまくいきました。しかし最後は結局失敗しまして、金の切れ目が縁の切れ目、というわけでその時点でブルボン王朝の命運は終わっていました。その後のルイ16世夫妻の責任は、さほどないのです。
江戸幕府が倒れて明治政府ができたのは、ペリー来航のように西洋列強の軍事圧力が高まり、強力な中央政府をつくる必要が差し迫ったからです。フランスも同じでして、絶対君主といっても統治力が弱かった。国民をひとつにまとめるような政治力ではなかった。
統治力の不足を意識しているルイ14世は、たとえばベルサイユ宮殿をつくって、舞踏会三昧をして、王の力を誇示して、人々の気持ちを自分にひきつけようとした(西洋の王様は多かれ少なかれこういうプレゼン努力が欠かせない存在です。日本の天皇、将軍に比べると生存競争ハードなのです)。
その結果王家の財政が破綻寸前になったのですから、無駄な努力だったのですが、マリー・アントワネットの浪費は14世の努力を踏襲しただけで、彼女の責任ではないです。
「今はこのやり方ではだめだ、もっと新しい事を考えないと」と思えなかったのはそれは彼女の責任ですが。
では「新しい事」とはなにか。
たとえば後年シャネルがしたように、
「価値ある宝石をつけたからといって、それで女が豊かになるわけではない」
と宣言して、
リラックスしたスタイルで民衆に接する、とかすればよかったかもしれません。
(続く)