4:羽開地(はねひらくち)

・・未開紅(みかいこう)・・

4:羽開地(はねひらくち)

海から上がったようなAyanoさんの黒髪に冬の菊の花を飾って。

「陰暦正月の元旦

 群卿百寮の朝賀と共に長安の春は暦の上に立つけれども

 元宵観燈の頃までは大唐の都の春色もまだ浅い」

「立春の後約十五日、節は雨水に入って菜の花が咲き、杏花が咲き

 李花が綻ぶ頃となって花信の風も漸く暖く

啓蟄に至って一候桃花、二候棣棠、三候薔薇」

春の陽に大地が温まり、草木が芽吹くのと同時に

冬眠していた虫が穴から出てくる啓蟄(けいちつ)を過ぎ、

美しい蝶々になって空に飛び立ってゆくように、蝶や鳥の羽根は、

海から陸に上がった人魚、遠くさかなのヒレをも思い起こさせます。

「春分に及んで一候海棠、三候木欄と

次々に種々の花木が撩乱を競う時に至って帝城の春は日に酣に

 香ぐはしい華の息吹が東西両街一百十坊の空を籠めて渭水の流も霞に沈み

終南の山の裾には陽炎が立つ」

古来尽く属す紅楼の女(ひと)、

それは東洋に古来から伝わる太陽の女神、

家家楼上、花の如(ごと)き人。

徳島で晴れの日を迎え花嫁となられたAyanoさんが

お式後にお送り下さったお二人の写真を最後に飾って。

 

 

 

→ひなぎくについて

 

 

 

 

3:未開紅(みかいこう)

・・未開紅(みかいこう)・・

3:未開紅(みかいこう)

立春の前約十五日、まだ冬のさなかでのAyanoさんのお式。

春らしい色合いの花々の中で、紫色のリューココリーネが主役です。

死の世界に向かってゆくような、

この海底の絵が中でも一番お好きとのこと。

果敢に水底に向かってゆく人魚姫は、

Ayanoさんその人であるように思えました。

その先に何があるか分からなくてももしかして何も無いかもしれなくとも、

蕾の殻を破って咲かんとしたり暗闇の中で生を予感しようとしてみたり、

花の蕾や水の中の世界というのは、

結婚前の女性の心境や立場にも通じているようです。

絵の人魚が手に持つ白い卵を、

胸元の刺繍素材でつくった額にかかるヘッドドレスの中央に、

刺繍ラインとスパンコールはオクトパスの手足と吸盤のようにも、

水泡のようにも見えてきます。

ドレス切り替えの中央に咲く、

水面の花に向かってのぼるように施した

スカートの白と金レース刺繍は、

水上から差す陽を目指すように仕上げました。

ずっと以前に見せていただいた、

Ayanoさんのお着物のお写真の柄の

紅白の鶴が空に飛ぶ様に見習って、

海中に咲き上がる花のつるを表しました。

「未開紅(みかいこう)」という和菓子が一番お好きといわれた

Ayanoさんのご実家は、

和菓子店を営まれています。

彼女のご出自をドレスの名前にさせていただきました。

四国徳島の海と空を思いながらコーディネートや装飾を重ねて、

次回は「羽開地(うかいち)」、

陽の光で羽根が花びらに変わる時のことです。

 

 

 

→Nexp Page 4:羽開地(はねひらくち)

 

 

 

2:未開白(みかいはく)

・・未開紅(みかいこう)・・

2:未開白(みかいはく)

春を迎える前の季節のお式の日だからこそ

Ayanoさんのドレスに春の花開く様を描けたらと、

本格的な春の到来、お彼岸、春分の頃を思いながら、

優しい金、薄黄の色を白地のドレス、ヘッドドレスに挿して

エドマンド・デュラックのこの草木花の絵のように

切り替えライン刺繍をしてほしいと日香さんにオーダー、

優しい日の光と同時に、水の中も表現できるよう、

蓮の花を胸元中央にモチーフ刺繍をしてもらうことに。

デュラックの絵を集めた日香さんのピンを見ながら考えました。

http://pinterest.com/mukainichika/edmund-dulac/

ドレスの切り替え線に梅の花の蕾の小枝のようなラインを描いて、

虹(オーロラ)色に光る白や透明な素材に黄色を挿してゆこうと、

春の日の光を夢見て生まれてくる固い花の蕾やなぎさの蝶を思いながら、

今は未だでもやがて来る晴れの日に向かって私たちは製作を始めました。

 

 

 

→Nexp Page 3:未開紅(みかいこう)

 

 

1)花開地(はなひらくち)

・・未開紅(みかいこう)・・

1)花開地(はなひらくち)

春を迎える前に桜の花の散ってしまったような

今年の春先、まだ梅の花の蕾の開かない頃に、

「未開紅(みかいこう)」と名づけたドレスを、

四国の徳島からお通いいただいたAyanoさんにおつくりしました。

エドマンド・デュラックの海中の絵、人魚姫の描かれた絵を、

イメージにされたいとAyanoさんは最初におっしゃられました。

こちらも同じくデュラックの絵です。

愛する人のため水面に現れた人魚姫。

海と天の境でもあり繋ぎもしている水面に咲く蓮の花を

胸元に刺繍をして据え、頭、髪には、菊の花々を飾りました。

デュラックの数枚の絵と共に、現在と過去、未来と現在を思いながら。

お正月、新しい年を迎えたばかりの頃のことでした。

梅の花の蕾のカタチをした「未開紅(みかいこう)」

という和菓子が一番好きといわれるAyanoさんは、

桜の花より以前の、梅の花の咲く、まだその前の雪の季節、

冬と春の最初の境目の季節を、その晴れの日に選ばれました。

 

 

→Nexp Page 2:未開白(みかいはく)

 

 

3:薄紫色のバラをヘッドドレスハットに飾って

・・アントリュスカ(芳香草)・・

3:薄紫色のバラをヘッドドレスハットに飾って

 

シンプルなビスチェとチュールスカートですので

印象的なコーディネートをしてみようと

気品あってとてもよい香りの薄紫色のバラ、

「ライラックフレグランス」を、ヘッドドレスハットに飾って、

胸元の素材レース刺繍、スカートの透かせレース刺繍の

Aラインのスカートに合わせて、エレガントなスタイルで。

ユーモア感じさせる冗談をとても朗らかに仰られ、

いつもスタッフに楽しい気分でお仕事をさせて下さった、

一緒にいるとどことなく、野の緑の中で風に揺れて咲く、・

すみれや藤の花を思わせるように優しかったMaoさんに

私たちが感じてた、本物の花さながらの気品を、

米川が撮影を通してカタチにさせていただいた一枚。

フラワーコーディネートを通して、これから嫁がれる

Maoさんに、感謝の気持ちを伝えられたらと思いました。

2:お式の際に髪に飾るお花を探して

・・アントリュスカ(芳香草)・・

2:お式の際に髪に飾るお花を探して

Maoさんのドレスが決まって、コーディネートを考えてゆきました。

まずはお式時のスタイルから・・

薄黄緑色が少しかかった、シルクサテンのシルクフラワーを飾って、、

お選びいただいた、ロングフェースヴェールをかむられて。

ヴェールにはスカートとお揃いのレース刺繍

胸元には高級素材刺繍レース使い・・

髪型に三つ編みこみがなされていることもあり、

ヘッドのお花はもう少し可憐なものが似合われそうです。

そこで束田が持ってきたのは、

小さな百合の花のような「リコリス」。

束田がMaoさんのために選んだ、

Maoさんから感じられた花でした。

華やかだけれど優しくなるように、両サイドに下方に飾って。

山里に咲く百合の花のように・・

 

 

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1)ドレスに出会っていただけるように

・・アントリュスカ(芳香草)・・

1)ドレスに出会っていただけるように

Maoさんはお式は九州(福岡)、

遠く大津(滋賀県)からいらして下さいましたので、

ご来店は2回だけという進行で、レンタルラインにてご検討をいただきました。

Maoさんは、レース刺繍の施されたチュールスカートドレスをご希望され、

チュールスカート素材とお揃いの、

サッシュベルトや衿袖が付いたタイプのもの、


胸元のラインが、ハート型のもの、真っ直ぐのもの、

レース刺繍の種類など、

ドレスラインは決定しましたので、

身頃のデザイン、カタチを、一緒に選んでゆきました。

 

 

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4) ・・And JOB

・ ・ プロセス・Aiko様 ・ ・

4) ・・And JOB

6月の結婚式当日、

「理想の女性」であるお婆さまに見送られながら、

Aiko様はお嫁にゆかれました。

披露宴会場に置かれたお写真は、
時間を越えて、
今日のAiko様の姿を見守っていました。

「美味しいお店を開くのが夢なんです」
Aikoさんがお話くださったことがありました。
「何時行っても灯りがついて開いているお店を」
かたちは違っていても、Aikoさんの夢はすでに、
実現されはじめたように思えています。

結婚式から数日経ってAiko様から、
お写真を添付したメールをいただきました。
「・・・実は二次会の後もわたしは
ドレスを着させて頂いたままだったのです。
あの日の最後は、彼と、彼の親友と、その彼女の私の親友の4人で
シャンパンを飲んだとてつもなく幸せな真夜中でした・・」

その時頂いた画像を掲載させていただいて、
Aiko様とひなぎくの、
ほんのひと時の物語を。
締めくくらせていただきたいと思います。

 

当日のお写真へ

 

 

→「ひなぎくについて」

3)Deity of Mercy

・ ・ プロセス・Aiko様 ・ ・

3)Deity of Mercy

そして迎えた、ヘアメイクリハーサル。
ヘアメイクの高橋亜子さんに手による、
まさに亜子さんらしい、繊細で上品なメイクに包まれて、
静かに微笑まれるAiko様の姿がありました。

ヘアスタイルは、かねてよりのご本人のご希望で、
前髪をセンターパーツに分け、クラシックな印象をつくります。
あの日からずっとこの日まで、切られたことの無かった、
腰まで長いAikoさんの黒髪を、低めの位置でやさしくまとめて。

当初からのご希望でらした、マリアヴェールで。

空気感のあるレース刺繍は、お顔の輪郭を綺麗に見せてくれます。
ヴェールの縁には、アンティークゴールドのメッシュリボンが、
淡水パールと共に縫い、飾り付けられています。
ヴェールラインを引き締めて、横顔は聖母のように優しげに。

披露宴前半では、アクセサリーをカチューシャ風に飾って。

慎重に決定された付け位置が、中世的な雰囲気を醸し出します。
アンティークの家具が置かれ、西洋の絵画が壁に掛けられた、
クラシックな雰囲気の、会場の内装に似合うスタイルで。

お色直しでは、自由でのびやかなお花のコーディネイト。
緑の芝の丘状の、会場の美しい庭に、よく似合うスタイルで。

花輪っかヘッドドレスは、お顔や髪型とのバランスを取ることが、
とても難しいスタイルです。

ナチュラルで作為を感じさせない、
一見、無造作につくられたかのようにも思える
このダウンヘアスタイルは、計算され尽くしてつくられました。

Aikoさんは、一緒に楽しくお話をしていても、
いつもどこか、静寂を感じさせる方でした。

しんとしてただずまれている彼女の表情は、
観音様のように澄んで、清らかに感じられて。

透明なまでに綺麗な、Aikoさんの表情にはまるで、
聖なるなにかが宿っているかのように思われました。

 

 

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2)Girl and Lady

・ ・ プロセス・Aiko様 ・ ・

2)Girl and Lady

Aiko様にお仕立てさせていただいたのは、
シンプルに見えて、実はとても繊細につくりこまれた、
生成りのハイウエストワンピースドレスです。

生成りのシルクに、ギャザーのコットンシルクオーガンジー、
またその上に、別倍率のギャザーのシルクチュールを重ね。
三枚の身頃パターン(型紙)全ての形状が異なっています。

シルクチュールは、一本一本の糸が非常に細い
希少な生地で、常にご用意できるとは限りませんが、
この時はフランス製のものが、運良く手に入りました。

繊細な生地を理想のラインにカタチづくるため、
形状記憶極細ワイヤーを特殊な方法で入れ込み、
伸縮性のある細糸を使いながら、身頃は手縫いで仕上げました。

ハイウエストの切替などに、ゴールドの細レースや
細いアクセサリーワイヤーを絡め使った、細かな装飾を、
生地の風合いを生かすべく、丁寧な手仕事で加えています。

ご本人の骨格、とくにお顔まわりを美しく見せるために、
ドレスの身頃胸元デザイに次いで
重要になってくるのは髪型、ヘアスタイルです。

ドレスの身頃胸元のライン、デコルテと同じく、
ほんとうにちょっとした髪の流れの違いで、
お顔の印象は驚くほど変わってきます。

「濃い生成りのエンパイアラインドレスを」
Aikoさんのしごくシンプルなご希望に感じられたのは、
ガーリッシュ、グリーク、ロマンティック、
たとえばそうしたスタイルを、装う ことではなく。
「本当の少女の心を残した、本物の大人の女性」
Aikoさんご本人に感じられた、ハートとアプローチ。
両者を最大限に表現出来る、そんな花嫁像でした。

Aiko様の花嫁衣裳を完成させるため、
そして花嫁姿を実現させるために。
ドレスのフィッティングの過程で同時に、
ヘアメイクスタイルを丁寧に検討してゆきました。

そして、コーディネイトの選択が加わります。
たとえば一口に、お花のコーディネイト といっても、
花の量、種類、付け方など、選択肢は無限にあります。

そんなコーディネイトを鏡の前で繰り返すうち、
Aiko様の表情にも変化が見られたかのようでした。

少女のようなあどけなさから、乙女のようなしなやかさへ、
ご自身のお顔立ち、そして内面を再確認されたようでもあり、

また、新しい旅立ちに向けて、
心の準備をされているようでもありました。

 

 

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1)JOB

・ プロセス・Aiko様 ・ ・

1)JOB

 

Aiko様は、理想の女性像を、
ミュシャの「JOB」という絵にたとえて下さいました。

「どうしてJOBなんでしょうね」
「当時女性が社会に進出し始めた頃だからかな?」

そんなAiko様は、ご両親を亡くされ、
ゴルフの打ちっぱなし場を継がれ、経営をなされていました。
お仕事は大変でしょうのに、初回来店のご試着では、

少女のように初々しい表情を見せて下さいました。

一着のドレスだけを、お式の終日着ていたいと
ご希望されたAiko様のために、
ミュシャの絵のようにソフトな生成りのドレスと、
花と夢がおりなすコーディネイトをご用意しようと。
スタッフの皆で考えさせていただきました。

 

 

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7) あたらしの花

・ ・ プロセス・Minako様 ・ ・

7) あたらしの花

美菜子さんのヘアメイクは、
ヘアメイクの木戸口さんにお願いしました。

まずドレス、そしてヘアメイクスタイル、
何より花嫁様ご本人との相性を考えて、
担当のヘアメイクさんを決めさせていただいています。
もちろん、ご希望のヘアメイクさんをご指名もいただけます。

「お式時スタイル」

このリハーサルの頃から、当初彼女がご希望されていた
ピンク~薄紫の色合いのセミキャスケード、
オールドローズをメインにして小花を垂らした
お色直しブーケのイメージが、次第に変わられてゆきました。

腰の帯バックリボンに飾るシルクフラワーのバックアレンジメント、
その付け方のご希望は、ブーケでいえばセミキャスケード、
以前よりご希望の、縦長のフォルムで、とのこと。

ブーケをつくられる原田さんは、このシルクフラワーの色や素材、
そしてアレンジメントの付け方、かたちにまで合わせて、
お色直しブーケの花材とデザインを考えてくれていました。

そして新たに、美菜子さんがご提案されたブーケは、
腰の飾りと高度にミスマッチで、とても面白い組み合わせのものでした。

「披露宴前半スタイル」

重なり合ったバラの花々がこぼれるようにして
自然なラウンドのかたちを成す、大きなクラッチブーケ。

ただ自然に束ねたたくさんのピンクのバラを優しく抱えて
後姿のモデルが窓辺に佇んでいる優美な写真、
ソフトフォーカスの雑誌の切り抜きを送って下さいました。

ただ、撮影用にそうしたブーケをおつくりすることは出来ても、
お式当日、実際にお持ちいただくには
大きなクラッチブーケの茎の部分の色や形は強すぎて、
ピンクドレスの身頃のフォルムとぶつかってしまいます。

ご希望と完成度、どちらも叶って実現させることが
どうしたら出来るものかと考え込んでしまった時、
美菜子さんは優しい言葉を送ってくれました。

「披露宴後半(帯飾りバックリボン)」

ドレスをおつくりして、コーディネートを考えていて、
進む道が見えなくなったり、手が止まってしまった
そういう時に、お客様である花嫁から、
逆に励まされたことが、たくさんありました。

お客様に恵まれて、花嫁達につくりあげられてきた、
それがひなぎくの、これまでの10年の歴史でした。

花嫁衣裳は最終的には、花嫁ご自身につくられます。
ひなぎくの花・・花嫁衣裳は、花嫁ご自身を映した鏡。
新しい時代が訪れても、そのことは変わらないでしょう。

「二次会スタイル」

リハーサルのこの日、ブーケをつくって下さる原田さんが、
お花の最終打ち合わせ用に、シックな花束をつくってくれました。

美菜子さんはその花束をとても気に入られて、
後は全てを任せます、当日のブーケが本当に楽しみですと、
最後に仰って下さいました。

美菜子さんとご婚約者の彼が、デザインにこだわられ
ご一緒に手づくりされたというお式のパンフレットの模様は、
白とサーモンピンクと若草色の「三蘭丸」。

花のように丸みを帯びて優しい色合いの「三蘭丸」は、
お二人がこれからつくりあげられる新しいご家庭、
ご夫婦となられるお二人のこれまでと、これからの歴史、
お二人の新たなる「家紋」のように感じられました。

 

結婚式当日の写真

 

 

→ひなぎくについて

6) 母の教えてくれた色

・ ・ プロセス・Minako様 ・ ・

6) 母の教えてくれた色


「白オーヴァースカート本仮縫い」

美菜子さんが披露宴前半の際に
お式時本体ドレスの上に重ねて着られる、
白色のオーヴァースカートです。
光沢があって滑らかな、
仏製シルクシフォン地で仮仕立てをしました。

「ピンクオーヴァードレス本仮縫い」

披露宴後半時、お色直しで着ていただく、
ピンクのオーヴァードレスの仮縫いです。
パターンはもちろん、生地の向きや折り方も、
美菜子さんのお体のラインに沿って考えました。

今回おつくりするドレス一式の中で、
パターン、仕立て共に、最も難しいラインのドレスです。
二度の仮縫い、本仮縫いを経てやっと、
このデザインに相応しい生地を最終決定しました。

当初、オフホワイトのシルクオーガンジーを使って
お仕立てをすることを想定していました。

ですがフィッティングを経て、
美菜子さんの肩や首のラインやお肌の色、
また、髪に飾るシルクフラワーやかんざし、
ブーケに使う花の色合いを考え合わせ、
生地の変更をお願いさせていただきました。

「着こなし、立ち振る舞い」

以前、美菜子さんにお似合いになると感じた
スッキリとした緑、優しいグリーンの色合いが、
とても淡く、でも深みのあるエメラルド色に、
お式が近づくにつれて変わってきたように思えました。

逆にフォルムは、より構築的な印象のラインを
思い描くようになってゆきました。
けれど、固い印象にはならないようにお仕立てしたい。
凛とした気品、そして、柔らかな艶やかさが、
美菜子さんに感じられるようになっていました。

立体的なフォルムにつくりこんでも
透明感あって柔らかい印象に仕上がる、
極薄地の薄ピンク色のシルクオーガンジーを、
お色直しドレスの生地にお選びしました。

ベージュピンクとオフホワイト、生成り、
お色直し用本体ドレスの懐かく優しい色合いに
オーヴァードレスを重ね着をしたその時に、
華やかさと気品ある輝きを放てるように。


「二次会ドレスコーディネート」

「お母様の花嫁衣裳を着られて」

お母様がご結婚の際にオーダーをされ、
お色直しで着られたという白とピンクのドレスと
共布でつくられたボンネを、
美菜子さんが持ってきて下さいました。

白のオーガンジーリボンが縫いこまれ
ピンクのスパンコール刺繍がなされて、
華やかに可愛らしく、丁寧な手仕事でつくられた
ふわふわとしたその優しげなドレスは、
なんだか美菜子さんのようでした。

彼女のお色直しドレスの腰に飾る
シルクフラワーを色ブーケがわりにして、
ボンネを斜めに飾って、記念撮影。

このドレスには、小さなラウンドブーケが似合うかな。
白とピンク、エメラルドグリーン色の
手毬のようなブーケが。そんなことを思いました。

 

 

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5) 武蔵野の一日

・ ・ プロセス・Minako様 ・ ・

5) 武蔵野の一日

美菜子さんには、武蔵野にある
緑の美しい会場での朝のお式から、
夜も賑やかな吉祥寺の街で
音楽好きのお友達が集まる二次会まで。

表情の豊かに変わる、
4スタイルのドレスコーディネートをご提案しました。

「お式ドレスコーディネート」

「お式はシンプルで普遍的なスタイルで」
という美奈子さんのご希望をうかがって、
イメージしていた白ドレスを
お式とご披露宴前半とで、2スタイルに分けて考えました。

胸元のブローチをポイントにした
サテンシルクのドレス本体を、
ギャザーチュールロングヴェールと合わせた、
シンプルなスタイルをご提案しました。

グリーンがかった白色の茎と葉の
チューリップのシルクフラワーつるを、
一厘一々の花びらを大きく開いて
ヘッドから大きく垂らして印象的に飾り、
透明感ある雰囲気を醸し出せるように。

「ご披露宴前半ドレスコーディネート」

ご披露宴前半では、本体白ドレスの上に
シルクシフォンのオーヴァードレスを優しく纏って。
生花のアマリリスやクリスマスローズを
ヘッドや背中に飾り、白ブーケに合わせます。

アクセサリーワイヤーに生花のグリーンつるを
巻き付けたものを、ヘッドドレスと肩紐に使い、
ドイツの森の緑の妖精のようなイメージの、
コーディネートに仕上がるように考えました。

お色直しには、ご結納の時の
美菜子さんのお着物姿をイメージした、
薄ピンク色のドレスをお描きしました。

クラシックピンクのシルクと生成りレース、
そしてオフホワイトレース刺繍オーガンジーを重ねた
本体ドレスに、更にピンクレース刺繍を施した、
薄ピンク色のシルクオーガンジーを重ね着します。

衿のタックの直線的なラインに合わせてつくる
ベビーピンク色のシルクの帯を、
ビーズ刺繍レースのリボン飾り帯とともにしめて。

「ご披露宴後半ドレスコーディネート」

会場にある日本庭園と茶室の趣に合うようにお考えした
この着物風のドレスに合わせて、
ブーケをつくって下さるフローリストの原田さんが、
桜の花のようにほんのりとピンクがかった
八重咲きのバラを、早い段階から予約してくれました。

二次会ではまた大きく雰囲気を変えて、
お洒落でカジュアルなイメージに。

ベージュの仏製コットンチュールを裏打ちした
バラとペーズリー柄のレースのモチーフ刺繍を施した、
薄ベージュ色の仏製ストレッチシフォンの
アメリカンスリーブ身頃と、取り外し可長袖を、
お色直し本体ドレスの内側に重ね着するスタイルです。


「二次会ドレスコーディネート」

首元と手首に、ベージュ~ブラウン系のビーズを使った
個性的なアクセサリーモチーフを縫い付け、
生成り~クラシックピンクのドレスに
アイリッシュコーヒーのような色合いをプラス。

このアクセサリーの名前は「ラプンツェル」。
つたの絡まるレンガづくりの塔の上で
お姫様が月を眺めているような情景の、
グリム童話の絵本の挿絵の色合いをイメージして。

ベージュのレース刺繍オーガンジートレーンは
二次会場内で動き回りやすいよう、
指に引っ掛けることの出来る、2way仕様です。
古代ケルト伝説の「妖精の丘」に出てくる、
王女様のケープのようなデザインです。

トレーンのギャザーベルトには、
アンティークベージュピンクの
シルクローズコサージュを飾ります。
アンティークゴールドのラリアットを絡めて
秋色の実物を散らした、ベージュピンクのバラ、
「サハラ」のミニクラッチブーケを合わせて。

お式の一日を通じて、テーマが自然につながるように。
武蔵野に相応しい、花嫁衣裳を考えさせていただきました。

 

 

 

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4) 襲ねの色目

・ ・ プロセス・Minako様 ・ ・

4) 襲ねの色目

「白とグリーンのコーディネートイメージ」

意外に思われることかもしれませんが、
白という色には様々なグラデーションがあります。

ドレスの本生地、またそれに重ねる他の生地以外に、
裏地や芯時といった様々な生地の使い方や張り方、
生地の向き、縫製時の縫い糸の選び方、、
同じ白の色でも、人の目に映る表の生地の色合いは、
仕立て方法によって全く異なってきます。

「ヨーロッパの緑深い森に棲む妖精のイメージ」

美菜子さんのお好きなアマリリスの花びらの
質感とかたちを思わせる、
艶のある光沢が美しい伊製サテンシルクの、
ソフトマーメイドラインの本体白ドレス。

柔らかで繊細な仏製シルクシフォンの
オーヴァートレーンスカートを、
彼女の持たれている、ほんわりとした雰囲気に合わせて、
本体ドレスにふんわりと、軽く重ねて。

ダヴィッドの「レカミエ婦人の肖像」で表現されているような、
黄色い太陽の日に光輝くような、無垢で強い白さよりも、
美菜子さんには、もっと可憐で繊細な白さを。

緑の持つ瑞々しい力があって優しく光る、
森の木漏れ日のような透明に近い白色が、
初秋の朝の日差しの中、会場のお庭の芝生の丘で
お式をされる彼女に、きっと似合われると思いました。

外国の方も多くゲストにいらっしゃる
美菜子さんのご披露宴でのお色直しには、
お花や小物の組み合わせを前提にした、
着物がテーマのさくら色のドレス姿を考えました。

「桜の花と生成りのコーディネートイメージ」

日本の着物は、生地それ自体の形状よりも、
生地や小物の合わせによって、衣装の奥行きを表現します。

微妙に異なる色や素材の生地を幾重にもかさね、
季節に合った質感、襲(かさ)ねの色目を生み出します。

そして、着物生地と帯柄との出会いに始まり、
異なった素材同士を調和させるための衣装小物、
小道具は対句表現的に飾ってゆきます。

「桜の木の枝を肩に背負(しょ)った藤娘のイメージ」

薄ピンクとオフホワイトの絹を重ねた色合いに
着物柄のように刺繍ラインが浮かび上がるよう、
仏製リヴァーレースをカッティングして手縫って、

彼女のお好きなピンク色のリボンで帯をしめ、
レースの飾り帯を背負(しょ)って。

紅色の花簪や帯留アクセサリーを飾り、
桜のような一重咲きの薄ピンクのバラと
薄紫の藤の花の枝のシルクフラワー、
そして、同様のイメージのブーケを合わせました。

このドレスにとって、そしてお花の大好きな
美菜子さんにとられてもっとも大切といえる、
和洋折衷のブーケに始まる花のコーディネートは、
これから彼女と過ごす時間(とき)に決められてゆきます。

 

 

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3) 旅の記憶

・ ・ プロセス・Minako様 ・ ・

3) 旅の記憶

美菜子さんは、子どもの頃にドイツ、
高校生の時にはアメリカ、
大学生の頃はカナダに留学と
外国で暮らした経験が多く、
色んな国の文化に興味と理解を持たれています。

ご婚約者の彼も、写真をはじめ
音楽や絵画、芸術全般に造詣の深い方です。
おふたりは、留学先のカナダで知り合われました。

「ドイツの湖のほとりでご家族と」

最初はお互いに日本人同士であることも
はっきりと分からないまま、
同じスクールにいながらも距離を置きながら、
英語で会話を始めたというおふたりでした。

初めて日本語で話した時には、
距離感が一気に縮まって
なんだか急にとても照れてしまったそう。

古く日本人は、互いに和歌を交わして
結婚を決めたりしました。
おふたりにとってはその瞬間が、
本当の出会いの時だったのかもしれません。

「留学先のお友達と着物姿で」

その年の冬、おふたりは共通のお友達たちと一緒に、
クリスマスから年末をN.Y.で過ごすことになりました。

その時彼にはもう、美菜子さんとの結婚の予感があったとか。

それから後、彼にプロポーズされて。
彼がずっと以前からそう言っていたとお友達に聞いて、
美菜子さんはとても驚かれたそうですが、
たぶん知らなかったのは
彼女だけだったのではないかとも思われる、
マイペースな美菜子さんです。

「ピンクのパーティードレスで」

その方の持っているオーラ、ご雰囲気が、
デザインのインスピレーションになることがあります。

最初に美菜子さんにお会いした時、
黄色がかったグリーンの色合いが
彼女に感じられたような気がしました。

「ドイツの森の木の葉が持つような
そんな生命力が感じられます」とお話ししてみると、
「幼少の頃はドイツにいたんです」とちょっと驚きながら、
子どもの頃のお話をしてくれました。

「ドイツの森で大好きなポニーと」

それから彼女が持って来てくれた
懐かしい色合いの一枚の写真には、
大好きだった白い仔馬と
仲良しだったドイツ人のおじさん、
優しく光る緑の思い出が写っていました。

美菜子さんのルーツを垣間見せてもらったようで、
グリム童話に出てくるお姫様、
ラプンツェルのお姫様が着ていたような
そんなドレスを。彼女におつくりしたくなりました。

 

 

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2) 撫子の花と桃の木と

・ ・ プロセス・Minako様 ・ ・

2) 撫子の花と桃の木と

「‘なでしこ’のご試着」

美菜子さんがお式時の白いドレス姿に
思い浮かべられるのは、
真っ白なユーチャリスのように
気品があって清らかなイメージ。

そして、咲き開いたアマリリスの花や
太い緑の茎の持つ生命力にも、とても惹かれるそう。

艶のあるオフホワイトの伊製サテンシルクと
生成りがかった仏製リヴァーレースを使った
‘なでしこ’をご試着いただきました。

「ご婚約者の彼と」

‘なでしこ’は、お着物の好きな花嫁のために
白無垢をイメージしておつくりしたドレスです。

トレーンには、着物のお引きずりをイメージした
レース刺繍がたくさんのパールとともに施してあり、
胸元やトレーンの裾には、淡水パールなどを使った
蝶々のかたちのモチーフ刺繍がなされています。

このドレスを着られた花嫁の
ご実家の家紋が、蝶々でらしたのです。

「‘ピーチー’のご試着」

アンティークピンクのシルクに
オフホワイトの仏製シルクオーガンジーをかぶせて
リヴァーレース刺繍とビーズ刺繍を施した、
‘ピーチー’も着ていただきました。

桃色の絹に白い霞がかかったような
色合いと風合いを出せるように生地を重ね、
春先におつくりしたドレスです。

桃の花の木をイメージして、
アンティークなシルバーと薄ピンク色の手刺繍と
グレーがかったグリーン色のアクセサリーを、
ドレスに合わせておつくりしました。

ご両親が付けられた花嫁のお名前から
「繭」と「樹」をイメージして、
ブーケやシルクフラワーなど
お花のコーディネートをしたことを思い出します。

美菜子さんはこのドレスの雰囲気をとても気に入って下さいました。
彼女が結納の時に着られた桃色のお着物の持つ雰囲気に、
通じているところがあるように思いました。

「トライアルコーディネート」

美菜子さんのいちばん好きな色は、ピンク。
お色直しでは大きくイメージチェンジされたいとのこと。

ピンクの花と葉や茎をイメージした
コーディネートをさせていただきながら
おふたりの外国での出逢いのこと、
ともに音楽が大好きなこと、色々なお話をして
楽しい時間を一緒に過ごさせていただきました。

彼女が持たれる魅力をより輝かせてくれる、
そんなドレスをおつくるするために、
もっとお話をお伺いしたくなりました。

美菜子さんの「家紋」、
誕生から結婚に至るまでの
彼女ご自身のライフヒストリーを。

 

 

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